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喜多郎

KITARO interview喜多郎

“水”の大事さを次世代へと伝え続けたい…
“ここに生きる”大事さを一緒に求め続けたい…



“水”をテーマとした長良川との出会い

私と岐阜との繋がりは、2002年NHK『にんげんドキュメント』の『喜多郎〜長良川を奏でる』がきっかけです。“水”をテーマに、アルバム「水に祈りて」を作曲。音楽を担当するだけでなく実際に自分で長良川を体感しながら、大日岳にある分水嶺・源流から河口までを川を下って訪ねるものでした。
水は人間にとってとても大事なものだと思います。私は現在アメリカ在住ですが、海外に居ると日本人の水に対する価値観が少し薄いと思います。蛇口をひねればそのまま飲める日本と違って、アメリカに限らず、中国でも東南アジアでもインドでもそのままではとても飲める水ではないです。日本は水の国というのを実感します。
水はいろんなものに使われます。ここにある餅菓子も水を使って練ってあるものですし、何より水を一滴も飲まず3〜4日生きるのは危険です。私たちの体は7割近くが水分と言われてますよね。それくらい人間にとってすごく大事なものです。でも、日本人は身近に豊かな水があるからそのことになかなか実感が湧かない…。


喜多郎

私たちは山の頂きから海の水面までの間にしか住んでいない
その間に住んでいることの自然への感謝がなければいけない

分水嶺を岐路として、自然の成り行きとして水の流れが始まります。そこから、人のさまざまな手が加わっていきますよね。その点、岐阜は標高の高い山から海抜ゼロの河口附近まであるわけだから、それを誇りに思ってほしいと思います。それだけの幅を持った文化があるからです。私の体験からすると標高の高さで文化に違いがあります。アメリカでは今標高200mくらいのところに居ますが、かつては2800mのところに住んでいました。長野の家は900m、名古屋の家はもっと低いですからね。
でも、それぞれの文化に活かされていてすべてに繋がるのは“水”です。命の根元だと思います。そんな大事なものを、次の世代、さらに次の世代へとどうやって伝えていくか…。私の音楽にまつわる活動を通じて、“本当に大事なんだよ!”ということを伝えられたら、次の世代の人たちがそれを守ろうという気持ちになってくれると信じているわけです。
岐阜は長良川の伏流水を水道水にしているそうですね。でも、このままだったら、かなり危ないです。鵜匠の山下さんと長良川を下りましたが、川岸にはゴミとか空き缶がいっぱい捨ててあるところがありました。河口堰のことは難しい課題もありますが、かなり環境が変わってきていると聞きます。雨水や雪解けの水の流れの道筋を辿って、その途中に住む人たちにお話を聞き、郡上では川のすぐ脇に家々が建っているのを眺め、鵜匠さんからは鵜との共同生活の話を聴きながら、長良川における生活としての水、文化としての水を守ってほしいと思いました。雨が降り、山が吸ったり川になったり、そして蒸発して雲になり、再び雨や雪になる…。私はこうしたサイクルを感じ、自分の気持ちを曲にしています。

喜多郎さん宅にて

そこに元々あった一番大事なものを取り戻してほしい。
そして、一緒に創り上げていく…

私と長良川との縁で「鵜飼大使」にも選ばれまして(2002年)、当時の3年間夏に長良川河岸で野外コンサートをしました。長野県の御柱祭り(アルバム『GAIA-ONBASHIRA』)や富士山の太鼓奉納(喜多郎氏主催イベント)なども、その土地々々に昔ながらに残っている文化との関わりから生まれたものです。
地元の方々が、私たちのやることに賛同してくれて一緒に創り上げていく…、それが私の理念の一つです。そうでなければ単に自分のエゴで終わってしまいます。だから、一回限り、その場限りというのは嫌ですね。継続してやっていくこと。できれば100年、200年つながっていく“文化”を創り上げていきたいです。いろんな出会いがあってポッと火が点いてそれがずっと続く…。そしてその地域々々での役に立っていく…。そこでもっともっと一般の人たちが目を見開いて、自分たちにとって一番大事なもの、生きていく上で一番大事なもの再確認してほしい。それが岐阜の場合は“水”だと思うんです。

世界のいろんな国に行きますが、日本はとてもいい国です。そしていい国であってほしいと思います。でも最近はアメリカから帰ってくる度に日本でも大変悲惨な事件が起きていて、ガッカリします。心の問題だと思います。荒廃してきているのでしょうね。
いかに心豊かにするかがテーマになってきます。本来持っていた日本のいい文化・伝統が、世界の中の日本という位置づけで何とかしようという世界戦略の動きの中で変わってきたのだと思います。本来はその国、あるいはその地域で自給自足できたものが、外の世界を見るようになってそこから取り入れようとするようになった…。他の国のいろんな文化と照らし合わせるようになってしまった…。
本来は、“ここで生きる”ことの大事さが、他と比較するようになって自分たちの文化を捨てるようになったのです。あるいは、経済主導の勝ち組・負け組の格差社会をつくり出してしまい自分たちを見失ってしまう…。だから、人がそこに暮らしている、本来あった社会(文化)を取り戻すべきべきではないか、というのが私の今の考えです。


喜多郎

鐘の音。
人の心が癒され、平和な地球を。

『空海の旅』という私の曲があります。これは遡って考えれば『シルクロード』からの大きな流れがあります。遣唐使として中国に派遣された空海。玄奘三蔵によってインドから中国に仏教がもたらされ、それを空海が日本に持ち帰り、奈良に一つの文化が開花したわけです。その奈良でコンサートなどをしているうちに、今度はNHK番組『四国八十八カ所』の音楽を担当することとなり、お寺の鐘の音をモチーフにした曲を作った…。
そんなある時です。2001年9月11日、あの同時多発テロです。私はアメリカに向かう飛行機の中にいて、ハワイへ緊急着陸をさせられました。テレビでその映像を見せつけられながら思ったのは、自分に何ができるか、ということでした。平和に対して自分として一体何ができるのか…。
それこそ“鐘”の音を使って曲を作って、それを多くの人に聴いてもらうことで人の心が癒され、徐々に世の中が良くなってくれたら…という思いでした。鐘の音は1/fという揺らぎの成分が内在され、それが人の気持ちを鎮静化させてくれる作用を持っているのです。そして始まったのが、八十八カ所すべての鐘の音を収録していき、それをモチーフにして全88曲を完成させていくことです。現在23の鐘の音まで終わりましたが、生きているうちに残りの65も全て完成させたいと考えています。
そして、この私たちの地球が、すべての人にとって平和な社会の地球であってほしいと思います。


KITARO PROFILE アルバム『Thinking of You』
1953年、愛知県生まれ。現在アメリカ在住。音楽家(シンセサイザー)。日本では1980年NHK特集『シルクロード』の音楽が広く知られるが、アメリカでの活躍はさらに偉大で、1997年オリバー・ストーン監督『天と地』での音楽監督を務め、そのサントラアルバムがゴールデングローブ賞・作曲賞を受賞。またグラミー賞には11回もノミネートされ、2001年にはアルバム『Thinking of You』でベスト・ニュー・エイジ・アルバム賞を受賞。世界的アーティスト。
●長良川での喜多郎氏
長良川の上流から下流を実際に舟で下った喜多郎氏。長良川沿岸で生活するさまざまな人と語らい、自然や水に対する思いは音楽に表現されている。これを縁として長良川でのさまざまな活動にも繋がっている。
●アルバム[水に祈りて](2002年)
2002年放映のNHK番組『喜多郎〜長良川を奏でる』で使用された楽曲が集録されている。このアルバムには長良川を自ら体感して表現した音楽とイメージした音楽で構成されている。『水に祈りて(テレビバージョン)』をはじめ、『雫の舞』『流れの中で』の新曲、およびリストアップ曲。
アルバム『水に祈りて』
アルバム『SPIRITUAL GARDEN』
●KITARO & KEIKOによる
初のコラボレーション・アルバム
[SPIRITUAL GARDEN]
(2006年)
アルバム『THE ESSENTIAL KITARO』
●アルバム
[THE ESSENTIAL KITARO](2007年)
最新ベストアルバム。『流れの中で』も含まれ、アルバム『空海の旅』『空海の旅2』などからの選曲、他